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「情熱大陸」回想録 <シシリア・ラビダ農園で出張料理>編 (1)

徹夜で仕込みを間に合わせ、いよいよ出張料理当日です。
まずは、テーブルセッティングから始めましたが、ラビダ家に古くから伝わる、シシリアの伝統的な陶器の飾り皿を中心に置きまして、シンプルなテーブルコーディネートを心がけました。
メニューもイタリア語とフランス語を交えて、手書き致しましたが、睡眠不足で、頭がボーッとしていましたので、スペールが正しかったか、どうかは、よく分かりませんでした(笑)。
キッチンでは、初日から懐いてくれていた、10才になる息子さんが、私の隣で、一生懸命に盛り付けを手伝ってくれたのですが、撮影が始まり、カメラマンさんから、離れて着席するように言われますと、とても悲しそうな表情をしていたのが、印象的でした。
彼は、将来、料理の道に進めば、きっと一流のシェフになれるだろうと確信していますが、何しろ、貴族のひとり息子さんですから、そうも行かず、いずれは、シシリアの社交界を背負って立つ、立派な人物になるのだろうな、と秘かに想いを巡らせたりもしました。
1品目の前菜は「野菜と天然海老の和風マリネ、搾り立てオイルとゴマソースの2色仕立て」でしたが、ここで、思わぬハプニングに遭遇致しました。
各野菜は、それぞれの歯応え、美味しさを味わって頂けるように、細心の注意を払いながら、ボイルし、一晩、和風の出汁に浸けておいた「自信作」なのですが、何と、7名様中4名の方が、殆ど手を付けずに残されたのです。
今まで、20年近く出張料理を続けて来ましたが、こんなに残されたのは、初めてでしたので、本当に驚きました。思わず、撮影をストップさせようかと思ったくらい、びっくり致しました。
南イタリア、特に、シシリアの料理は、野菜を何でもクタクタに煮込む傾向が強くて、せっかく美味しい素材の味を台無しにしているような気がしていましたので、今回は、あえて、コグレ流の野菜料理で、その美味しさに気付いて欲しいと思っていたのですが、結果は、御覧の通り、そう甘くはありませんでした(笑)。
異国の長きに渡る食文化を変えることは、そう簡単ではないことを、改めて実感致しましたが、野菜料理に自信はありましたので、正直なところ、ショックも大きかったです(笑)。
今回は、コース仕立てで、2品目をすぐに出さなければいけませんでしたので、「反省」は、一瞬にして、次の「黒鯛のお刺身サラダ、ワサビ醤油風味の搾り立てオイルかけ」の盛り付けに全力を注ぎましたが、撮影をこのまま続けて良いものなのか、心は大きく揺らぎ、内心は、かなり半信半疑でした。


シンプルなテーブルコーディネートを心掛けました。

イタリア語とフランス語を交えた、手書きのメニューです。

息子さんも、プレゼントした帽子をかぶり、一生懸命にお手伝いしてくれました。

ラビダファミリーが集まった、和やかな雰囲気の御食事会でした。

手間暇かけて、野菜の歯応えと旨味を生かした1品なのですが・・・。

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2010年06月22日 23:48に投稿されたエントリーのページです。

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